本来、関東〜紀伊半島の太平洋側に偏って分布する、樹高5〜10mの落葉高木。空中窒素の固定能力があって、緑化目的で植栽されるため、近年分布域を拡大している。樹皮は灰褐色で、若い枝には円形の皮目が多く、太くなると縦に筋が入る。
葉は互生し、葉柄は1〜2cm。葉身は長さ6〜12pの長卵形だが左右不同。側脈は12〜16対あり、縁には鋭い重鋸歯がある。葉の表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色。秋には緑のまま落葉する。
雌雄同株で雌雄異花。花期は3〜4月で、葉の展開前に咲く。赤褐色の雌花序1〜数個が、雄花序の上部に上向きにつくのが本種の特徴。雌花には花被が無い。尾状の雄花序は無柄で、前年枝の葉腋に1個ずつやや曲がって垂れ下がり、大量の花粉を飛散させる。
花序はそのまま木質化し、マツカサ状の果穂として残る。堅果は長さ約4.5mmの長楕円形で、両側に2枚の翼を持ち風で散布される。
名前の由来:葉の大きいヤシャブシの意。熟した凸凹な果穂の様子を夜叉に例え、果穂にタンニンを多く含み、昔、黒色の染料とされた五倍子(フシと呼ぶヌルデの虫こぶ)の代用としたため。 日本固有種 |