岩手県〜熊本県の低い山地に自生する、樹高約25mの落葉高木。日本海側の多雪地帯には少なく太平洋側に多い。幹の直径は70cmにもなり、樹皮は暗灰褐色でいぼ状の皮目が目立つ。
葉は互生。葉身は長さ5〜10cmの長楕円形で、やや薄い洋紙質。先端は鋭く尖り、縁には浅く波打つ鋸歯がある。側脈は10〜14対あり、裏面に突出する。特に裏面には毛が多く、主脈沿いに長毛がある。
雌雄同株。4〜5月、葉の展開と同時に開花する。雄花序は新枝の下部の葉腋に垂れ下がり、多数の黄色の小花が集まって球形をしている。雄花の花被は円錐形で先端で6裂する。雌花序は新枝の上部の葉腋から出て上向きにつく。雌花は直径5mm程の総苞の中に2個入っている。
果実は3稜形で長さ1.5cmくらいの堅果。浅くて短い殻斗内に2個の果実があり、熟すと4裂して果実が露出する。殻斗の柄は細く長い。
名前の由来:「材質がブナより劣る」という意味で「イヌ」。「否(いな)」が転化して「イヌ」になったと言う説もある。また、葉の裏面に毛があるのでイヌがつく、という説もあるらしい。
※ ブナは、樹皮が灰白色でイヌブナほどの凹凸は見られない。側脈は7〜11対で、イヌブナよりも少ない。秋に熟すと殻斗が割れて堅果が覗くが、イヌブナの堅果は熟す前から先端が見えている。 |